あらゆる販売促進においてポイントとなる取り組みの一つに、顧客のセグメント化があります。
年齢や性別、居住地域や家族構成といった細かい項目はもちろんですが、商品やサービスを提供する側にとってどのようなステージに位置するかが重要です。
すなわち新規の顧客や見込み顧客、あるいは優良顧客といった分類であり、そのうち「休眠顧客」へのアプローチは大きな課題の一つです。
本記事ではそんな休眠顧客の掘り起こしを行うメリット、そのための基本となる手順や効果的に行うためのポイントについて解説します。
休眠顧客とは?
まず「休眠顧客」とはどのようなステージにある顧客のことを指すのか、おさらいしておきましょう。
これは以前に商材やサービスを購入・利用したことがあるものの、一定期間リピートがない顧客を意味する言葉です。
購入・利用は一度きりとは限らず、しばらく定期的に買ってくれていたものの、ある時を境にそれが止まってしばらくコンタクトがない状態の顧客も該当します。
買い換えや利用のスパンが長い商材やサービスは別として、継続が前提のものが途中で休眠していることからそう呼ばれています。
休眠顧客の掘り起こしを行うメリット
このような休眠顧客へのアプローチ、つまり掘り起こしを行うことには大きなメリットがあります。
休眠顧客は一度あるいは二度以上、商材やサービスを購入・利用してくれた経験があることで、自社商品に対する一定の理解と知見がある顧客です。
当たり前のようですが、見込み顧客や新規顧客と決定的に異なるポイントであり、的確な働きかけを行えば継続顧客として復帰してもらえる可能性が高まります。
そのためにはなぜ休眠顧客になっているかの原因を探り、個々に適したアプローチを行う必要があります。
次でその原因の例を見てみましょう。
休眠顧客になってしまう原因
顧客が休眠状態になってしまう原因にはさまざまなものがありますが、売り手に対する要望と現実との齟齬や、顧客自身の事情によるものなどが一般的です。
以下に代表的な例を3点挙げました。
商材やサービス、価格への不満
顧客が休眠状態になる原因の第一には、商材・サービスの内容や価格に対する不満があります。
顧客にとって思うような効果や使い勝手ではなかったり、価格面で満足できなかったりといったケースです。
例えば諸事情から価格改定を行い、単価が上昇したことなどをきっかけに購入・利用が停止したり、あるいは契約を解除したりといった事態も起こり得ます。
商材やサービスには万人が支持するものはありませんが、顧客がどういった点に不満を覚え、どの程度の価格であれば許容できるのかといった意見が重要なデータとなります。
顧客側の状況の変化
顧客の側に何らかの変化が生じたとき、それまで購入・利用していた商材やサービスを必要としなくなった結果として休眠化するケースもあります。
例えば健康増進を願って何らかのサプリメントを継続購入していた顧客が、十分な効果を得たことからそれ以上商品を必要としなくなるといったパターンが挙げられます。
また顧客のライフステージごとの家族構成や生活リズムの変化、あるいは転勤や進学・就職などに伴う引越しなどがその契機となることも。
この点についても、顧客にどういった性質の状況変化があったのか情報収集することが望ましいといえます。
競合他社への乗り換え
また、よほどオリジナリティのある商材やサービスでない限り、多くの場合で他社と競合することが一般的です。
顧客は常に同種の商材・サービスを複数社間で比較しているといえ、現状では継続顧客であったとしても離脱や休眠の可能性は否定できません。
自社商品よりも魅力を感じるものがあれば他社へと流れるのは必然で、そうした乗り換えも休眠顧客化する原因の一つです。
常に競合他社の動向を注視しつつ、顧客へのアプローチを柔軟に変えていくことも必要でしょう。
休眠顧客の掘り起こし手順
ではそうした休眠顧客に復帰してもらうためには、どのような手段をとればよいのでしょうか。
以下に休眠顧客を掘り起こす手順を3段階に分けて例示しました。それぞれの項目には個別に詳しい内容を挙げているので、順に見ていきましょう。
1.休眠顧客をセグメントする
休眠顧客自体が各顧客を区分したセグメントの一種ですが、さらに細かく小分類のイメージで捉えてみましょう。
休眠顧客のセグメントには大きく分けて以下の2パターンがあり、それぞれに適したアプローチが必要なため、まずはそのどちらにあたるのかを把握することが肝心です。
一度だけ取引があり、その後取引がない顧客
第一に、一度だけ取引があったもののその後の購入や利用がないタイプの休眠顧客が挙げられます。
一度も継続利用に至らなかった層であるため理由などの情報が不足しています。このケースではヒアリングやアンケートで重要なポイントを聞き出せる可能性もあります。
商品やサービスの内容に満足できなかったのか、あるいは価格面で納得できなかったのか等々、休眠顧客となった根拠に改善のヒントがあるかもしれません。
複数回取引があるが、直近の取引がない顧客
第二には、それまで複数回の取引があったにもかかわらず直近での購入・利用がなく休眠顧客化するパターンです。
商材やサービスを幾度か買ってくれたということは、その時点では顧客のニーズを満たしていたものと考えられます。
従ってそれが途中で止まることにはある程度明確な理由があると考えられるでしょう。
そうした休眠顧客化の根拠を特定することで、再び継続顧客に復帰してもらえる可能性のある層といえます。
2.原因別にアプローチ方法を検討する
休眠顧客のセグメントが完了したら、次に原因別のアプローチ方法を検討しましょう。
顧客が商品やサービスの購入・利用を停止する理由にはパターンがあり、そのどれに該当するかを正確に見極めることが必要です。
以下に休眠顧客化する理由4パターンと、それぞれでのアプローチ例を見てみましょう。
商材やサービスへの不満が原因の場合
顧客が休眠化するのには、商材やサービスの内容への不満が原因となるケースがあります。
利用してみたものの予想した効果が得られなかったり、期待していたものとギャップがあったりした場合にはそれ以上の継続利用にはつながりません。
そうした場合にはヒアリングなどを通じて、顧客が不満に感じている点を把握することがセオリーです。
その上で、不満点に応えられる可能性のある他の商材やサービスを紹介し、利用を試みてもらうといったアプローチなどが可能です。
価格への不満が原因の場合
一方、価格への不満が原因で休眠顧客化するパターンもよくあります。
価格改定ではほぼ値上げを意味しているといっても過言ではなく、費用負担の増加を契機として購入や利用を停止するケースも見られます。
また、たとえ価格が据え置きの商材・サービスであったとしても、継続して利用しているうちに定期的な負担感が増していくことも休眠化の原因の一つです。
このようなケースでは割引キャンペーンやクーポンの発行など、価格面でのメリットを感じさせる特典付与を節目ごとに行うなどして顧客を引き留める方法が挙げられます。
顧客側の状況の変化が原因の場合
休眠化する原因が顧客側における何らかの変化によるものである場合、商材・サービスの瑕疵ではない分ポジティブに対応できる可能性が高まります。
そうしたケースでは以前とは異なる使用法をアナウンスする等、引き続き興味を持ってもらえるような働きかけが重要です。
例えば継続利用の通販商材を扱っているとして、顧客の引越しなどで住居移転手続きがなされず休眠化するといったパターンもあります。
そうしたケースでは往復はがきなどで容易に住所変更手続きができる動線を設けるなど、できるだけ顧客側の手間が少ない方法で慰留しましょう。
環境変化は想像以上にストレスとなるため、諸々の手続きは煩雑に感じるものです。
定期的なお知らせや案内を行うなど、普段から顧客の状況をよくモニターしておくことが肝心です。
競合他社への乗り換えが原因の場合
顧客が商材やサービスを類似の競合他社に乗り換えた場合も、休眠顧客化の原因となります。
乗り換えには他商材・サービスに現状で利用しているもの以上のメリットを感じた結果として行われるものと、試験的に使ってみようとした結果起こるものとが想定されます。
どの競合のものを新たに利用しているかが分かればベストですが、予測される他社のサービス内容や価格帯をよく分析して、それに対抗できる自社の商材・サービスを再度アピールすることがポイントです。
顧客にとってのメリットを明確に感じてもらえるよう、サービス内容でも価格面でも具体的な訴求を行うことが必要です。
3.休眠顧客の掘り起こし手段を選ぶ
最後に休眠顧客の掘り起こしにはどのような手段があるか検討しましょう。
それぞれに特徴があるため、状況によって最適なものを選択することがポイントです。
各手段は単発で行うだけではなく複数を組み合わせることも効果的なため、顧客のタイプに合わせてアプローチ法を工夫しましょう。
電話
テレフォン・アポイントメント(テレアポ)という営業手法があるように、電話で直接顧客と話すのは有効なアプローチです。
ヒアリングという形でダイレクトに顧客の要望を汲み取れ、なおかつ自社の商材やサービスをきめ細かく説明することもできます。
本人と直接話すことができれば休眠している根拠もより正確に探れる機会が増えるため、掘り起こしに効果を発揮する方法の一つです。
メール
休眠顧客にはメールを送ることも効果的ですが、この場合にはメルマガのような多数に向けた一方向性の内容ではなく、各顧客に合わせた内容にカスタマイズするのがポイントです。
休眠顧客のニーズを予測し、価格や数量での優待など特典情報を知らせるなどして興味を引く内容を工夫します。
またメールを読んだ後にどのような行動をとってほしいかを十分検討し、例えば商品ページのサイトへのアクセスを誘導したり、返信やアンケートへの回答で優遇を得られたりといったベネフィットを用意するとよいでしょう。
DM
また、休眠顧客には現物としての紙のDM(ダイレクトメール)で訴求することも有効です。
本人宛てのDMは高い開封・閲読率を誇り、75.4%もの人が中身を読んでいるというデータがあります。
顧客ごとに内容を変えるパーソナライズDMなら個人に対してピンポイントでのアプローチが可能で、さらにはクーポンなどを添付することで受け取ったDMそのものに金券的な価値が生じます。
関連記事:パーソナライズDMとは?メリットや作成~発送までの流れを解説
遷移先:https://dmplus.jp/column/about-personalized-dm/
例えばそのDMを引換券として機能させることで実店舗への来訪を喚起することもできるため、休眠顧客に継続顧客として復帰してもらうチャンスを生み出すことが可能です。
※参考:一般社団法人 日本ダイレクトメール協会 研究開発委員会編. 「DMメディア実態調査2022」調査報告書要約版.
https://www.jdma.or.jp/upload/research/20-2023-000026.pdf
, (2023-7-14).
休眠顧客の掘り起こしを効果的に行うポイント
では次に休眠顧客の掘り起こしを効果的に行うためのポイントについて見てみましょう。
以下に重要性の高い4点を挙げました。
早い段階でアプローチする
顧客が休眠化したことを確認したら、できるだけ早い段階でアプローチするのがセオリーです。
休眠期間が長くなればなるほど自社の商材・サービスへの関心が低下することが予想されるためです。
また競合他社への乗り換えが進む可能性も高まるため、休眠顧客は放置せず適切なタイミングを捉えてコンタクトを取りましょう。
例えば定期購入の商品が継続されなくなったことを確認した直後、電話でヒアリングしつつ別の商品を案内するなどの方法があります。
休眠顧客への理解を深める
顧客が休眠化するまでの利用状況やその原因、期間などのデータを分析し、休眠顧客への理解を深めることも重要な取り組みです。
そうすることで休眠顧客のニーズを捉え、継続顧客として復帰してもらうための施策を考案しましょう。
ターゲットを絞って優先順位を決める
全ての休眠顧客にアプローチできれば理想的ですが、その数が膨大である場合はターゲットを絞ることも必要となります。
休眠化して日が浅い、これまで継続して購入・利用していた、休眠に至った原因が明確である等々、考えられるアプローチがはっきりしている層を中心に優先順位を決めるのがポイントです。
顧客管理ツールを活用する
休眠顧客を掘り起こすためには、何よりも顧客のデータが重要です。
先に述べたとおり休眠に至る経緯やこれまでの利用履歴等々の情報を分析することで、復帰を働きかけるための施策を導き出します。
そのためにも顧客管理ツールを活用することがポイントとなります。過去から現在に至るまでの顧客情報を確認し、どのようなアプローチが最適解であるか検討しましょう。
自作する方法もありますが、専用の顧客管理・分析ツールが有料・無料いずれも数多くリリースされています。
まとめ
休眠顧客を掘り起こすために必要な知識や取り組みの概要を解説しました。
少なくとも一度は自社の商材やサービスを購入・利用してくれた層であるため、継続顧客になってもらうことが理想です。
休眠化自体は残念なことですが、むしろ問題・課題を明らかにするチャンスと考えて掘り起しの方法を工夫しましょう。
販売促進やマーケティング施策に有効な分析型DM(ダイレクトメール)を提供するDM+では、顧客ごとのDMに固有のQRコードを添付し、送付後のトラッキングができる「ユニークQRコード作成サービス」を展開しています。
これによりDMを受け取った後にどういった行動をとったか、あるいはそれをきっかけとして商品の購入やサービスの利用に至ったかをモニターすることも可能です。
休眠顧客の掘り起こしにも効果を発揮する紙DMを利用した販促・マーケティング施策に、ぜひご活用ください。