相手に直接送り届けることができる紙のDM(ダイレクトメール)。
EメールやSNSなどオンラインでの連絡手段が全盛の時代の中で、アナログな手法に思われるDMは、今なお高い閲読率が期待でき有効なマーケティングの手段の一つであり続けています。
強い訴求力を持つDMですが、一方ではその送付に関して遵守しなくてはならない法律もいくつか絡んでいます。
本記事ではそんなDMにまつわる法の注意点と、運用に際して知っておくべき3つのポイントについて解説します。
DM(ダイレクトメール)は違法?
初めにDMを送ることが法に触れるものではないかという疑問を解消しておきましょう。
結論からいうとDMの送付自体は違法ではなく、法的な根拠に基づいて送ることができる正式な連絡手段の一つです。
ただしこれを運用するにあたっては守るべき法や、違反となるおそれがあるため注意すべき点がいくつかあります。
DMの送付にはこうした種々の決まりごとを遵守する必要があり、もし違反した場合には罰則の対象となるケースもあるため十分に内容を把握しておきましょう。
DMが違法にならないために知っておくべき3つのポイント
それでは以下にDMが違法にならないためにはどのようなことに注意すればよいのかを具体的に見ていきましょう。
DMそのものに関する法的な位置付けや、記載・掲載する内容で法に触れる可能性のある事項を中心に、個別に詳しい内容も解説します。
1.信書にあたるDMは法的に認められている手段で送付する
DMの送付に関しては「信書」であるかどうかが重要なポイントとなります。
信書といえば通常の手紙などが思い浮かびますが、これ以外にも多くのパターンのものがあり、定められた手段でのみ送付することが認められています。
以下、信書の定義と内容の具体例、法に則って送る手段について見ていきましょう。
信書とは?
総務省のWebサイトには「信書のガイドライン」が掲載されており、詳しくその規定を知ることができます。
信書便法では「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」と定義されており、「特定の受取人」とは差出人がその意志や事実の通知を受ける者と定めた者を指します。
「意思を表示し、又は事実を通知する」とは差出人の考えなどを表わして事実を伝えること、「文書」とは文字などの情報が記載された紙などの現物を指すとし、電磁的な記録物はこれに相当しません。
このことから例えば年賀状の内容を記録したDVDを相手先に送った場合、信書には該当しないといえます。
信書にあたるDM
では信書にあたるDMにはどのようなものがあるのでしょうか。
同じく総務省のWebサイトでは「ダイレクトメール」の項目として、「文書自体に受取人が記載されている文書」「商品の購入等利用関係、契約関係等特定の受取人に差し出す趣旨が明らかな文言が記載されている文書」を挙げており、この要件を満たすDMが信書に該当します。
また、信書の条件は他に「書状」「請求書の類」「会議招集通知の類」「許可書の類」「証明書の類」であることが提示されています。
※出典:総務省.「信書便事業|信書のガイドライン」. https://www.soumu.go.jp/yusei/shinsho_guide.html ,(2023-7-27).
信書にあたらないDM
一方、信書にあたらないDMには以下のものが該当します。
「専ら街頭における配布や新聞折り込みを前提として作成されるチラシのようなもの」「専ら店頭における配布を前提として作成されるパンフレットやリーフレットのようなもの」の二つが記されており、対面あるいは配布の形で不特定多数を対象としたものは信書の条件に合致しません。
また、これ以外にも信書に該当しない文書としては「書籍の類」「カタログ」「小切手の類」「プリペイドカードの類」「乗車券の類」「クレジットカードの類」「会員カードの類」などが挙げられます。
さらには各種説明書の類・求人票・配送伝票・名刺・パスポート・振込用紙・出勤簿・ナンバープレートなども信書にはあたりません。
※出典:総務省.「信書便事業|信書のガイドライン」. https://www.soumu.go.jp/yusei/shinsho_guide.html ,(2023-7-27).
法的に認められている信書を送る手段
上記の事柄を踏まえ、信書は法に基づいた方法で送ることが大前提です。
法的に認められた手段としては郵便局での郵送物が思い浮かびますが、これも全てのサービスで信書を送れるわけではありません。
郵便局では具体的に「ゆうパック」「ゆうメール」「ゆうパケット」「クリックポスト」では信書を送付できず、これ以外の方法を用いる必要があります。
例えば普通郵便が挙げられ、この手段であれば条件を満たした信書を送ることが可能です。
また郵便局以外でも「信書郵便事業者」として総務大臣の認可を受けた企業が信書便のサービスを展開しており、佐川急便株式会社の「飛脚特定信書便」などが挙げられます。
この定めに違反した場合は罪に問われるため、十分な注意が必要です。
※2023年7月時点の情報です。サービスについては各社公式サイトをご確認ください。
2.DMを送付する際は個人情報の取り扱いに注意する
DMを送るためには信書便としての要件を満たすことが前提ですが、その内容についても注意が必要な点があります。
その一つに「個人情報」の取り扱いがあり、個人に宛てて直接届けるDMだからこその厳重な配慮が求められる項目です。
以下、個人情報についてDMで気を付けるべきポイントを見ていきましょう。
個人情報保護法とは?
DMの送付をはじめとして個人情報は市場での有用性を持つものですが、これに対する十分な配慮をしつつ個人の権利や利益を守ることを目的とした法律が「個人情報保護法」です。
2005年に施行された当初は「5,001人分以上の個人情報を利用する事業者」がこの法令を遵守すべき対象でしたが、2017年5月の改正により「個人情報を利用する全事業者」へと拡大されました。
これは大小の規模の企業をはじめ、個人事業主や学校、自治会などあらゆる主体に対して守ることが義務付けられています。
※参考:政府広報オンライン. 「個人情報保護法」をわかりやすく解説
個人情報の取扱いルールとは?.
, (2023-7-18).
<h4>個人情報とは?</h4>
では個人情報とは具体的にはどういった情報を指すのでしょうか。
政府広報オンラインによると、「生存する個人に関する情報で、氏名、生年月日、住所、顔写真などにより特定の個人を識別できる情報」と定義されています。
つまり組み合わせによっては存命中の個人を特定することができるあらゆる情報を指しており、万が一これらが漏えいすると個人に深刻な不利益が生じるおそれのある重要なものといえます。
また指紋や声紋、虹彩や手指の静脈などといった身体データも個人情報の一部です。
DMに該当する個人情報
次にDMにおいてはどういったものが個人情報に該当するのか見てみましょう。
名前・住所・性別・生年月日・電話番号などはまず思い浮かぶであろう要素ですが、これらを組み合わせると比較的容易に個人を特定できるため個人情報に該当します。
また、メールアドレスや過去の購入履歴、会員ナンバーやIDなども該当します。
これらは一見、直接的には個人の特定に至らないように感じますが、いずれも最初に挙げた重要な情報と紐付けされているパターンが多いものです。
したがって間接的な情報であっても個人情報にあたることがある点に十分留意しておきましょう。
個人情報に関して事業者や組織が取るべき5つの対策
個人情報を取り扱うにあたって、事業者や組織がその法令遵守と個人の権利保護のため取るべき対策があります。
以下に代表的かつ基本的なものを5つ挙げましたので、順に見ていきましょう。
1.利用目的を明確にして同意を得る
個人情報を取得する際、利用目的を明確にしてその本人から当該範囲での利用に同意を得る必要があります。
例えば何らかの会員登録で氏名・住所・電話番号などを取得したとき、それを用いてDMなどを送付したり、漏えい防止策を完備した上で販促に利用したりといったことが挙げられます。
利用規約や個人情報の取り扱いに関する事項への同意という形で実施されるパターンが多いでしょう。
2.顧客がDMの発送停止手続きをできるようにする</h5>
個人情報の取得によって本人宛てDM送付への同意を取り付けた場合でも、顧客がいつでもその発送を停止できるような仕組みを設けておくことが必要です。
発送や配信停止を申し込む専用の窓口や連絡先を案内しておくなど、顧客の意志に反してDMを送り続けることのないよう配慮しましょう。
発送停止の意思表示がどのタイミングで行われるかは予測できないため、申し込みから一定期間後の手続きとなった場合には、入れ違いでDMが届いたりすることがある旨を明記しておくのもポイントです。
3.情報管理を徹底する
個人情報を取り扱う事業者や組織は、当然ながら情報管理の徹底が重要となります。
情報漏えいは偶発的なものばかりではなく意図的に起こされた事例も少なくないため、セキュリティ体制の整備と適正な運用が必須です。
個人情報を扱う人員の意識に関する問題だけではなく、アクセス権限やチェック機構など仕組みとしての情報セキュリティも求められる課題です。
4.基本的には第三者へ個人情報を提供しない
取得した個人情報は基本的に第三者に提供しないという点もポイントです。
ただしDMの発送代行などの業務を委託する場合にはその旨も規約等に明記し、これに対する同意を得る必要があります。
またその際にはデータを第三者に提供した年月日、提供先情報、利用目的等を記録して一定期間保管しましょう。
いずれにせよ、個人情報については本人の同意がない限り第三者に提供することはできません。
5.プライバシーマークを取得する
事業者や組織が個人情報を適正に扱えるかどうかの客観的な証明として、「プライバシーマーク」の取得も推奨されます。
プライバシーマークとは個人情報を取り扱う体制を整備していることの証であり、このマークの使用には審査を経ての認証が必要です。
一般財団法人日本情報経済社会推進協会のWebサイトによるとその目的を、
- 消費者の目に見えるプライバシーマークで示すことによって、個人情報の保護に関する消費者の意識の向上を図ること
- 適切な個人情報の取扱いを推進することによって、消費者の個人情報の保護意識の高まりにこたえ、社会的な信用を得るためのインセンティブを事業者に与えること
としており、マークを表示することで高度な個人情報保護マネジメントシステムを確立・運用している証となります。
権威ある制度の一つとして、信頼感をアピールできるマークです。
3.他人の文章や画像の使用には気を付ける
最後にDMを作成するにあたり、他人の書いた文章や作成した画像などの使用で注意すべき点を見ておきましょう。
例えばインターネットから無造作に拾い上げた文章や画像をそのまま利用すると、場合によっては法に抵触することもあります。
以下に著作物や肖像、画像や写真を用いる際に気を付けねばならないポイントを挙げました。
著作権法とは?
まずは著作物に発生する「著作権」と、それを扱う「著作権法」について認識しましょう。
文芸や音楽、美術や学術には知的財産権の一種である著作権があり、通常は創作した本人である著作者に帰属します。
これを無断利用することで著作者の利益を損なうおそれがあるため、著作物は著作権法によって保護されているのが原則です。
従って、あらかじめ自由に利用できるなどの条件が明示されていない限り、文章や画像などの著作物を許可なく使用することは禁止されています。
ただし本体を主、転載したい部分を従とする場合には「引用」という形式が法的に認められています。
肖像権とは?
肖像権とは人物の容姿やその画像に関わるプライバシー権の一種で、人格権と財産権に分けられます。
例えば許可なく他人から自身の姿を撮影されたり、それを利用されたりといったことを拒否できるもので、偶然の写り込みであっても適用される権利です。
従って、DMで用いる写真や画像に人物の顔がはっきりと写っている場合には注意が必要です。
商用フリーの写真素材であればあらかじめその問題はクリアしていますが、そうでないものには十分配慮をしましょう。
具体的な法律や罰則はありませんが、権利侵害が認定されると損害賠償に発展する可能性も皆無ではありません。
最初からそうしたものを使用しないか、顔をぼかして個人が特定できないような加工をするなどの方法もあります。
他人の著作物や画像・写真を使用する際は必ず許可を取る
著作権法に違反したり肖像権を侵害したりする恐れがある場合は、著作物や画像・写真の使用許可を申請しましょう。
権利者によっては専用の問い合わせ窓口を持っていることもあり、有料で著作物の利用を許可するパターンも多く見られます。
著作権者が個人であるケースでも同様で、著作物利用に関しては書面を取り交わすのがセオリーです。
どうしても許可が取れなかったり著作者に連絡がつかなかったりする場合には、商用を含めた著作権フリーの素材を利用するという手段もあります。
まとめ
送付するDMが違法とならないよう注意すべき点を、具体例と共に解説しました。
DMの送付には法律上気を付けるべき点と、制作にあたっても他社の権利を侵害しない配慮が必要です。
これらの決まり事を遵守しつつ、上手にDMを活用しましょう。
販売促進やマーケティング施策に有効な分析型DM(ダイレクトメール)を提供するDM+では、顧客ごとのDMに固有のQRコードを添付し、送付後のトラッキングができる「ユニークQRコード作成サービス」を展開しています。
これによりDMを受け取った後にどういった行動をとったか、あるいはそれをきっかけとして商品の購入やサービスの利用に至ったかをモニターすることも可能です。
紙DMを利用した販促・マーケティング施策に、ぜひご活用ください。