長いライフステージの中で最も高額な買い物といえば、家や土地といった不動産といわれます。当然不動産を取り扱うビジネスも一件当たりの商談は巨大な額となるのが一般的です。
そんな不動産を専門に扱う仕事の一つに「不動産仕入れ営業」があり、難易度の高い仕事としても知られています。
本記事では不動産仕入営業のコツと、成果を上げるために必要なポイントについて解説します。
不動産仕入れとは?
最初に「不動産仕入れ」とはどのような仕事なのかを概観しておきましょう。
普段あまり耳にする機会は少ないかもしれませんが、端的にいうと販売用に土地や付随する建物を仕入れる専門職のことです。
この場合の販売とは、購入した土地に新たに住宅やマンションなどを建設して商品にするという意味で、そのための基礎となる土地が売買の対象となります。
大まかな業務の流れとしては、まず仕入れの対象となる土地がないか地主や不動産会社から情報収集を行います。
候補が見つかったら現地調査に赴き、問題がなければ土地を所有している地主や不動産会社と交渉して売買契約を締結して購入するまでが一連のパターンです。
場合によっては土地に付随する家屋やマンションなども一緒に購入することがあります。
フローとしては一見シンプルで簡単そうに感じられるかもしれませんが、不動産仕入れは営業職の中でも非常に難易度が高いジャンルでもあります。
次にその理由について見ていきましょう。
不動産仕入れの営業が難しい理由
不動産仕入れの営業は難易度の高い業務とされていますが、それにはどのような根拠があるのでしょうか。
取り扱う商品がたいへんに高額であるため利益も大きい仕事ではありますが、不動産仕入れ営業に関わるさまざまな特質がこの仕事を難しいものにしています。
動産仕入れの営業が難しいとされる3つの理由を見ていきましょう。
専門知識が必要
不動産仕入れ営業が難易度の高い業務である理由の一つに、高度な専門知識が必要である点が挙げられます。
土地という特殊な商品の性質から法律・建築・相続など多岐にわたる見識が求められます。
不動産取引に関わる法律だけでも不動産登記法・区分所有法・借地借家法・宅地建物取引業法・消費者契約法・国土法・地価公示法などがあり、いずれも実務レベルでの修得が必須です。
これらの専門知識がないと地主や不動産会社などと適切な交渉を行うことは難しく、顧客の信頼にも直結する重大なスキルといえます。
また法改正の動きも鋭敏に捉えて柔軟な対応を取る必要があるため、常に専門知識をアップデートし続ける姿勢も重要です。
物件情報がいつでもある訳ではない
不動産仕入れ営業で取り扱う土地という商品は定期的に安定供給される性質のものではなく、物件情報がいつでもある訳ではない点も業務の難易度を高めています。
その理由としては、不動産についての卸売市場は存在せず、欲しいタイミングで一定量を購入して順次在庫をさばいていくというスタイルが成立しないためです。
仕入れの時期も量も不安定であることが前提で、必ず手に入るとは限らないものを売買するという特質が、不動産仕入れ営業を難しくしています。
そのため不動産の仕入れについては広範に情報をキャッチするためのアンテナを張っておくことが重要で、タイミングが勝負です。
もし仕入れ情報を入手した場合は、たとえ営業時間外であっても即座にコンタクトを取って現場に急行するなど、機敏さとフットワークが求められます。
こうした特性から体力的にもタフさも必要で、知識と体力の両面が必要な業務といえるでしょう。
良い条件の物件はすぐに買い手が付いてしまう
前述のように、不動産仕入れの商品となる物件は安定的に供給される訳ではありません。それゆえに良い条件の物件はすぐに買い手が付いてしまうことも業務を難しくしている要因です。
不動産仕入れの営業員は当然自分だけではなく、それ以上の情報収集やアプローチを行う競合がひしめいていると考えられます。
そのため物件の条件が良ければ良いほど競争は激しくなり、タイミングとスピードが明暗を分ける要素となります。
普段から情報ネットワークを構築していち早く優良物件の存在をキャッチする必要がありますが、競合が多くなるほど仕入れ価格が高騰しやすくなるなど、仕入れに関する舵取りも難しい課題の一つです。
不動産仕入れで成果を出す6つのポイント
次に不動産仕入れで成果を出すためにはどのような点に注意すればよいか見ていきましょう。
業務自体の難易度が高い理由をこれまでに解説しましたが、その中でも心がけるべき姿勢や情報収集のための具体的なコツ、効果的な仕事の進め方などがあります。
不動産仕入れの営業法に絶対的な正解はありませんが、成果が出ないと感じるときに実践したいポイントの代表例を、以下に7つ挙げました。
誠実な対応を心がける
不動産仕入れの営業で成果を出すために重要なポイントとして、まずは誠実な対応を心がけることが挙げられます。
これは取り扱う商材が不動産であることに限らずあらゆるビジネスに通じる姿勢であり、知識・スキル・経験以前の大前提です。
特に不動産は非常に高額な商材であり、取引には条件や価格といった事務的な要素だけではなく、相互の信頼関係も重要となります。
また地主など交渉の対象となる人物は、比較的高齢の方が多い傾向にあります。このような場合、目上の人物に対する礼儀作法や立居振舞も大切な要素です。
年齢が近ければフランクに接してもよいという訳ではありませんが、言葉遣いや服装など、マナー面での心象が及ぼす影響は決して小さなものではありません。
常に真摯な対応を心がけて信頼関係を構築し、ビジネスパーソンとしての誠実さを相手に感じてもらうことが重要です。
動きやすい物件を注視する
不動産仕入れの営業で成果を上げるには、動きやすい物件を注視することも効果的です。
不動産仕入れでは売買の対象となる土地などが常時安定して供給されるわけではないため、鋭敏な情報収集と機動性をもって物件をリサーチすることがポイントであると前述しました。
そのため幅広いアプローチは有効な施策ですが、やみくもに営業をかけるのは効率的ではなくリソースにも自ずと限界がきます。
そこで動きがありそうな物件、つまり商材になる可能性が高い物件にあらかじめターゲットを絞り、地主や不動産会社などの所有者にコンタクトを取っておく方法が有効です。
以下にいわゆる「動きやすい」物件の代表例を3つ挙げました。
空き家
動きやすい物件の一つに「空き家」があります。
現在全国的に空き家の増加が問題化していますが、人が居住しなくなった家は傷みが早く、建物としての価値は早々に損なわれがちです。
一方では取り壊しにも少なくない額が必要であるため、倉庫として用いたり処分を保留したまま年月が経ったりした物件が数多く存在します。
しかし建屋そのものには価値がなくなったとしても立地条件次第では土地に商品としての十分な魅力があるため、ターゲットとして非常に有望です。
所有者にコンタクトを取って片付けや処分に関する悩みをヒアリングするなど、売却に向けた相談に発展する可能性も見逃せません。
駐車場
目にする機会の多い「駐車場」も、動きやすい物件の一つです。
住居や建物を解体した跡地が駐車場として利用されるシーンは珍しくありませんが、実は駐車場はさほど収益性の高い土地活用の方法ではありません。
所有者が更地にしたままよりは良いだろうという判断で、暫定的に駐車場としているケースも多く、より収益性の高い利用法を検討しているパターンが想定されます。
なかなか買い手がつかなかったり、その他の土地利用を行う資金がなかったりといった悩みを抱えている所有者もいるため、コンタクトを取って効率利用の提案と共に仕入れにつなげられる可能性があります。
駐車場であれば大型の建屋などはほぼないケースが多く、その後にマンションなどを建設しやすいというメリットがあるのも魅力的です。
新築マンション
意外なようですが、実は「新築マンション」も動きやすい物件の代表格として知られています。
それというのも住宅ローンを組んでマンションを購入した人が、支払い能力や状況の変化などの問題から早期に売りに出すケースが一定数あるためです。
この場合、仕入れる不動産は土地ではなくマンションそのものとなります。新築マンションの集合ポストなどに集中してポスティングを行うことで反応を得られる可能性があるでしょう。
空き家や駐車場と異なり、新築マンションは外観から売り手の存在を予測することが難しい物件ですが、ポスティングチラシや紙のDM(ダイレクトメール)といったツールを用いて売り手を発掘することが可能です。
動く可能性のある物件にアプローチする手法の一つとして取り入れましょう。
登記簿謄本をチェックする
申請すれば誰でも閲覧が可能な登記簿謄本をチェックし、その情報を元にアプローチをかけるのも効果的です。
例えば相続されて直後の物件があった場合、被相続者が売却を検討している可能性が高いため有望な仕入れ候補となります。
また相続した物件が共有状態になっている場合は、その分割に関して検討が行われていることが予測され、現金化しての分割も一般的な選択肢であるため仕入れにつながるケースがあります。
あるいは短い間に所有者が頻繁に代わっている物件も狙い目です。受け手がなかなか定まらなかったり、何らかの意図を持って投資家の手から手に渡ったりしている場合には、売却物件として仕入れがしやすくなっている可能性が高いでしょう。
業界内のネットワークを構築する
不動産仕入れの営業について、自身の持つ情報量や精度に不安がある場合は同じ業界内で情報交換ができる関係性を構築しておくことも重要です。
例えば大手の不動産会社や地場の不動産会社、銀行やハウスメーカー、税理士や営業スタッフといった業界プロとのネットワークが挙げられます。
仮に大手の不動産会社であれば保有する情報量が多く、顧客からの相談も寄せられやすいため有益なデータが集まっているでしょう。
地場の不動産会社は情報量では大手に譲るものの、在地の穴場的な物件に関わるデータをつかんでいることもあります。銀行やハウスメーカーについても同様です。
また税理士や営業スタッフなども、職業柄多くの不動産情報に接する機会があると考えられ、普段からこのような業界内ネットワークを広げて信頼関係を築くことがおすすめです。
不動産業界の流れを知る
不動産仕入れについてはやみくもに物件にあたるのではなく、業界全体の流れを知った上で効率的なアプローチを行うことも重要です。
近年の例を見ると、コロナ禍や業界を取り巻く情勢変化から閉店する傾向の高い業態が目立ちました。
売りに出されやすい店舗や土地の予測を立てることで、迅速に不動産仕入れの交渉へとつながるメリットがあります。
業界全体がどのような潮流にあるのか注視・観察し、今後それがどういった変化をもたらすのか予測することで、より鋭敏な営業活動が可能となるでしょう。
複数の案件を同時進行で追うようにする
動きやすい物件に注力することが、不動産仕入れで成果を出すポイントであると前述しましたが、成約にまで至るのはわずかな件数なのが現実です。
そのため複数の案件を同時進行で追うことも重要な施策となります。
幅広く仕入れのアプローチを行うことで成果が上がりやすく、案件の母数が増えることで失注した際のリスクを軽減することも可能です。
また物件はいつ動き出すか分からないという特性もあるため、浅く広く種まきをすることで、さまざまな可能性をキープする効果を発揮します。
物件は複数回アプローチする
不動産仕入れの営業では、物件には複数回アプローチすることも基本的な戦術です。
不動産は高額な商品であることから売り手も慎重になるのが普通である、そもそも一度の交渉で商談がまとまることはレアケースといえます。
訪問のみならず電話やメール、あるいは紙DMなどさまざまな方法で何度もアプローチを繰り返し、オーナーの要望をヒアリングして徐々に信頼関係を築くことが重要です。
まとめ
不動産仕入営業の概要や難易度が高い理由、そのコツと成果を上げるために必要なポイントについて解説しました。
不動産仕入営業は自ら現地に足を運ぶフットワークの軽さが重要ですが、フォローアップやお礼などのコンタクトには高い開封・閲読率を誇る紙のDM(ダイレクトメール)を用いることも効果的です。
販売促進やマーケティング施策に有効な分析型DM(ダイレクトメール)を提供するDM+では、顧客ごとのDMに固有のQRコードを添付し、送付後のトラッキングができる「ユニークQRコード作成サービス」を展開しています。
これによりDMを受け取った後にどういった行動をとったか、あるいはそれをきっかけとして商品の購入やサービスの利用に至ったかをモニターすることも可能です。
不動産仕入営業においても効果を発揮することが期待される、紙DMを利用した物件獲得施策にぜひご活用ください。