ダイレクトメールは、個人や法人などの顧客に広告をメールで配信する手法で、文字どおりダイレクトに情報を届けることができます。本記事では、ダイレクトメールのメリット・デメリットやCRM(顧客関係管理)による役割、効果的なダイレクトメール作成するためのポイント、活用方法などをまとめました。
ビジネスにおいて、どのような方法で商品やサービスを宣伝するのかは非常に重要なポイントです。個人や法人に直接広告を送付するダイレクトメールは、ダイレクトマーケティング手法のひとつであり、多くの企業が導入しています。
本記事では、ダイレクトメールのメリットやデメリット、CRM(顧客関係管理)におけるダイレクトメールの役割などを徹底解説します。効果的なダイレクトメールを構成する要素や活用方法も紹介しますので、マーケティングツールとしてダイレクトメールの導入を検討している方は参考にしてください。
ダイレクトメール(DM)とは何か?
ダイレクトメール(DM)とは、企業が個人や法人に向けて商品やサービスを宣伝するために送付する広告のことです。デジタル媒体を活用した手法が主流の今、一昔前の手法と思われがちですが、ダイレクトメールはCRM(顧客関係管理)を向上させる効果が期待でき、多くの企業が導入しています。
近年はDMというと、InstagramやTwitterなどのダイレクトメッセージを指すことも多くなりました。そのため、ダイレクトメッセージとダイレクトメールを混同してしまう方も多いですが、この2つは似て非なるものです。
ダイレクトメールは、色彩が鮮やかで目を引くような広告を制作できるのが特徴です。受け取った側が開封したくなるようなデザインにこだわることで、開封率を上げることができます。
メールと比べてデザインの自由度が高いため、効果的に商品・サービスを訴求することが可能です。ただし郵送する必要があるため、コストがかかることだけ認識しておきましょう。
DMの送るタイミングで効果を高める記事も参考にしてみて下さい。
ダイレクトメール(DM)のメリット
企業がダイレクトメールを導入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは8つのメリットを紹介します。
1. 広告の自由度が高い
ダイレクトメールは文章だけでなく、イラストや画像を取り入れたり、デザインを工夫したりできるため、広告の自由度が高い点がメリットです。ダイレクトメールに商品やサービスを紹介する動画のQRコードや購入ページのQRコードを載せておけば、より効果的なアピールが可能です。
2. 五感に訴えた宣伝ができる
ダイレクトメールは郵送で広告を宣伝するため、視覚だけでなく触覚や嗅覚などにも訴えかける宣伝ができます。特に多いのが嗅覚に訴えかける広告です。製品の香りを付けたり、顧客への想いを香りで表したりすることで、広告をより強く印象付けることができます。また商品サンプルを封入して直接製品の良さを実感してもらうことも可能です。
3. 顧客の手元に形として残る
広告が形として顧客の手元に残ることも、ダイレクトメールの大きなメリットです。埋もれがちなメールでの宣伝と異なり、情報が手元に残るダイレクトメールは、問い合わせや購入に直結しやすい傾向にあります。
4. 相手によって伝える情報を選択できる
送付するターゲットによって、情報を選択できるのもダイレクトメールのメリットと言えるでしょう。新規顧客であれば、新規購入割引やカタログ、期間限定のキャンペーンなど、既存顧客であれば紹介割引、クーポン、前回の購入履歴を反映させた広告などを送付できます。
5. テレビやインターネットを活用しない層にも訴求できる
テレビCMやWeb広告は不特定多数の人に幅広く訴求できる手法ですが、テレビを見ない層やインターネットを使わない層には商品やサービスをアピールできません。ダイレクトメールはさまざまなターゲット層に向けて、届けたい情報を確実に届けることができます。
6. 企業のブランディングにつながる
売上をアップさせるためには、商品やサービスだけをアピールするだけでなく、企業に対して良いイメージを持ってもらうことも重要なポイントです。デザインの自由度が高く、テキストやイラスト、画像などでたくさんの情報を伝えられるダイレクトメールは、企業理念やビジョン、コンセプトなどを伝えるのにも適しており、企業のブランディングにもつながります。
7. マーケティングに活用できる
ダイレクトメールを送付した後の顧客からのアクションを分析することで、マーケティングにも活用することが可能です。複数回、異なるダイレクトメールを送付してその結果を分析することで、どの広告への反応が高いか、リピートにつながりやすいかなどが分かります。得られたデータを分析すれば、今後の戦略に活かすことが可能です。
8. デジタル媒体よりも開封率が高い傾向にある
デジタル媒体を活用する企業が増えていますが、開封率が高いのは郵送で送るダイレクトメールです。一般社団法人日本ダイレクトメール協会が実施した「DMメディア実態調査2021」によると、ダイレクトメールの開封率は79.5%でした。(※)
一方、アメリカのメール配信ツール会社であるMailchimp社の調査によると、メールマガジンの開封率は全ての業界平均で21.33%とダイレクトメールよりも大幅に低い数値です。(※)このことからも、デジタル媒体よりも高い開封率であることが分かります。
※出典:一般社団法人日本ダイレクトメール協会. 「DMメディア実態調査2021」.https://www.jdma.or.jp/upload/research/20-2022-000021.pdf, (入手日付2023-02-03).
※出典:Mailchimp. 「2022 Email Marketing Statistics and Benchmarks by Industry」.https://mailchimp.com/resources/email-marketing-benchmarks/, (入手日付2023-02-03).
ダイレクトメール(DM)のデメリット
メリットが多いダイレクトメールですが、もちろんデメリットも存在しています。ダイレクトメールの導入を検討しているのなら、どのようなデメリットがあるかも把握しておきましょう。
1. コストと時間がかかる
ダイレクトメールを送付するためには、広告の印刷費用や郵送料が必要です。メールを使っての広告宣伝と比べると、そのコストは膨大になります。また送付するまでにも顧客の分析、送付リスト作成、印刷物のデザイン作成、印刷、発送など、行わなければならない作業も多く、時間もかかります。
コストと時間をかけても、ターゲットやダイレクトメールの目的が明確になっていなければ、思うような効果を得ることはできません。
2. 運用の改善にも時間が必要
デジタル媒体の場合、運用し始めて改善点が見つかれば、リアルタイムで改善することができます。しかし、ダイレクトメールは実施するたびに顧客の分析や印刷物のデザイン作成、印刷などの多くの工数がかかってしまうため、運用を改善するためにも多くの時間を要します。
3. 送り先情報を入手する必要がある
ダイレクトメールを送付するためには、送り先の氏名や住所などを入手しなければなりません。個人情報に慎重な扱いが求められる今、送り先情報の入手がスムーズに行かないことも多いです。
また効果的にダイレクトメールの施策を実施するためには、年齢や性別なども把握し、活用しやすいようにまとめておく必要があります。
4. 常に顧客データを最新にしておかなければならない
せっかく顧客データを入手しても、送り先情報が変わってしまうとダイレクトメールを届けることができません。そのため常に顧客データを最新の状態にし、データクレンジングをして、不要な情報を取り除いておく必要があります。
5. 効果測定に時間がかかる
さまざまな宣伝ができマーケティングに活用できるダイレクトメールですが、送付したからといってすぐに効果測定ができるわけではありません。送付した郵送物が顧客の手元に届き、反応があるまで一定の時間が必要です。
CRMにおけるダイレクトメールの役割
CRMは企業と顧客との関係性を管理する施策やシステムのことです。企業と顧客との関係が管理されることで、顧客と良好な関係を維持できるため、顧客満足度の向上につながります。
ダイレクトメールはCRMに大きな効果を発揮し、CRMプロセスの中でも特に重要な行動喚起の促進という役割を持っています。郵送で手元に届くため、不特定多数に向けた広告やメールマガジンよりも特別感が演出でき、新規顧客の購入行動や既存顧客のリピート購入を促しやすくなるでしょう。
また満足度の高いダイレクトメールを送付することで、顧客ロイヤリティ向上にもつながります。
効果的なダイレクトメールを作るために重要な4つの要素
効果的なダイレクトメールを作るには4つの要素があります。コストや時間がかかるダイレクトメールですが、効果的に活用するためにこれから紹介する要素をしっかり押さえておきましょう。
1. ターゲット:誰に送るか
ダイレクトメールをどのような顧客に送付するかは、ダイレクトメールの効果を大きく左右する要素になります。企業は見込み客、新規顧客、リピート顧客、優良顧客など、さまざまな顧客情報を保有しているはずです。その中からどの顧客に対してダイレクトメールを送付するかを、施策ごとに検討する必要があります。
またリピート顧客に対するダイレクトメールだとしても、性別や年齢、購入履歴、趣向なども十分考慮して、送付リストを作成しなければなりません。
2. オファー:何を送るか
顧客が求めている価値の提供や、ダイレクトメールを通して購入することでどのような利益が得られるのかを伝えることは重要な要素です。商品やサービスで得られる利益、ダイレクトメールを通しての購入での価格優遇、購入特典、商品やサービスに対する保証などが、オファーで有効なポイントです。
ただしあれこれ詰め込みすぎてしまうと、内容が分かりにくくなってしまい、スムーズな購入につなげられません。シンプルなオファーで、理解しやすい内容を心がけましょう。
3. クリエイティブ:どのように送るか
せっかくダイレクトメールを送付しても、開封して内容を読んでもらえなければ意味がありません。どのような内容の広告を送るかも重要なポイントです。
開封してもらうためには、気になって開けたくなるようなキャッチコピーやデザインにする必要があります。また封入する印刷物も目を惹くデザインにこだわり、中身を見てもらうためのメッセージも工夫しなければなりません。ほかにも紙の質や香りにこだわって、触覚や嗅覚に訴えかけるのも効果的です。
購入行動を引き出すためには、申込書の封入や購入ページへのリンクを提示する必要もあります。
4. タイミング:いつ送るか
ダイレクトメールをいつ送付するかも、効果的なダイレクトメール施策には重要です。新規顧客なのか既存顧客なのかによっても、送付するタイミングは変わってきます。相手の購入意欲がどのタイミングで増すのかを分析し、適切なタイミングでアプローチしなければなりません。
またしばらく購入履歴がない顧客に対して送付する場合は、最後の購入から一定期間が経過した場合にダイレクトメールを送付するのもおすすめです。
DMの効果的なタイミングは下記の記事を参考にしてみてください。
▼DMの効果的なタイミングはいつ?個人・法人の違いや4つのコツを解説
ダイレクトメール(DM)の活用方法
ダイレクトメールは、不特定多数に向けた広告や、メールマガジンでは得られない特別感を演出できる手法です。ここからはダイレクトメールの活用方法の例を紹介します。
新商品やサービスのリリース案内
新商品やサービスを認知してもらいたいときに、ダイレクトメールが有効です。写真やイラストなどを使って、商品やサービスのイメージやメリットなどをわかりやすく伝えられれば、購入につながるでしょう。案内だけでなく、サンプルの封入や、初回利用限定クーポンなどの封入は、顧客の購入行動をさらに引き出せます。
商品やサービスのリニューアルの案内
商品やサービスをリニューアルしたタイミングは、既存顧客にダイレクトメールで訴求するのに適したタイミングです。これまでの商品やサービスとの違いを感じてもらうために、サンプルやクーポンを封入するのも一つの手です。
来店促進
クーポンや来店特典などを封入すれば、店舗への来店を促せます。実店舗がある場合、見込み客に効果的にアプローチできれば新規顧客獲得につながることも。既存顧客には再来店を促しリピート率を高めることで、売り上げの安定が目指せるでしょう。
顧客のエンゲージメント強化
優良顧客やステークホルダーに対して、お正月やクリスマスなどの季節行事や自社のアニバーサリーなどに合わせてダイレクトメールを送付することで、顧客のエンゲージメントを強化できます。ギフトなどの特典をつけた箱型のダイレクトメールは、より特別感を演出しやすいです。
ダイレクトメール(DM)施策をするなら知っておきたい個人情報取り扱いの注意点
顧客に効果的なアプローチができるダイレクトメールですが、ダイレクトメールを発送する際は、個人情報の取り扱いに注意しなければなりません。ダイレクトメールを送付する際は、氏名、住所、生年月日、性別、電話番号、会員番号、メールアドレス、購入履歴などが個人情報に該当します。
氏名や住所はそれだけで個人が特定できる情報ですが、会員番号やメールアドレスのように、他の情報と紐づけることで個人が特定できる情報も個人情報に該当するので注意しておきましょう。
具体的にどのようなことに気を付ける必要があるのかを解説します。
利用目的を明示して個人情報を取得する
問い合わせがあった見込み客や、既に商品やサービスの購入履歴がある既存顧客に対してダイレクトメールを送付する場合でも、個人情報を取得する際に利用目的は必ず明示しなければなりません。
「商品に関する情報をお知らせをするために利用いたします」などの明示がなければ、取得した個人情報であっても、通知している目的の範囲を超えて個人情報を利用することはできません。また、利用目的には本人の同意も必要です。
問い合わせや商品購入時に個人情報を取得する際、ダイレクトメールを送付する可能性を踏まえて個人情報の取り扱いに関する内容を明示しておきましょう。自社のホームページのプライバシーポリシーに、個人情報をどのように取り扱うのか示しておくことも重要です。
情報漏洩防止を徹底する
個人情報の漏洩は大きな問題になり、企業としての信頼を失ってしまいます。個人情報の補完方法は紙でもデータでも構いませんが、漏洩しないようにセキュリティ対策を徹底しましょう。
ダイレクトメールを送る場合、送付先リストを作成し、顧客情報を印刷した宛名シールを用意することも多いですが、送付が終わったリストや使わなかった宛名シールをそのまま処分するのは危険です。必ずシュレッダーにかけるようにしましょう。
Pマークを取得する
ダイレクトメールを発送するしないに関わらず、個人情報を取り扱う場合はPマークを取得しておきましょう。Pマークの正式名称はプライバシーマークといい、取得することで個人情報保護に取り組んでいる企業であることをアピールできます。
代行業者に委託する場合も注意が必要
ダイレクトメール発送はかなりの時間がかかりますから、代行業者に委託する企業も多いです。代行業者に委託する場合も、自社で個人情報を扱う以上に注意しなければなりません。代行業者によって個人情報が漏洩した場合でも、発送元となった企業は信頼を失ってしまいます。
代行業者を選定する際は、値段やスピード感だけでなく、個人情報の取り扱いを徹底しているかどうかも重視しましょう。Pマークを取得していることはもちろん、どのように個人情報を取り扱っているか明確に示してくれる業者を選ぶようにしてください。
効果的なダイレクトメールで商品やサービスを訴求しよう
実際に郵送物が手元に届くダイレクトメールは、不特定多数向けのテレビCMやWeb広告、メールなどのデジタル媒体による広告ではできないアピールができます。特別感を演出できるため、顧客のエンゲージメント強化にも効果的です。ダイレクトメールの導入を検討している方は、今回紹介した4つの要素を十分検討し、効果的に商品・サービスを訴求しましょう。