めくって中身を見られる展開タイプのハガキやダイレクトメール。
通常ハガキよりも多くの情報を掲載できるこれらは「圧着ハガキ」や「圧着DM」などと呼ばれています。
個人宛てに届いたものは自身で圧着面をはがして開封するため、封書のように親展扱いとしても利用可能です。
日常的に受け取る方も多い情報媒体の一つですが、これにはどういった種類や実例があるのでしょうか。
本記事では圧着ハガキ・圧着DMの利用を検討中の方に向け、種類や圧着方法、メリット・デメリットを解説した上で、活用事例についてもご紹介します。
圧着ハガキ・圧着DMとは?
圧着ハガキ・圧着DMとは糊や薬剤を塗布して折り畳んだ紙に圧力を加え、接着した紙媒体のことを指します。
身近な例では自宅ポストに届く宅配ピザなど飲食店の販促DMや、個人宛てのねんきん定期便などをイメージすると分かりやすいでしょう。
ハガキやその他任意の規格の紙サイズに仕上がるものの、めくって展開できるため中面により多くのテキストやイラスト・画像などの情報を掲載できる点に大きなメリットがあります。
圧着ハガキ・圧着DMの種類
では圧着ハガキ・圧着DMにはどういった種類のものがあるのでしょうか。
サイズや形状はさまざまなタイプがありますが、以下では圧着するための折り方別に、ハガキサイズを前提とした代表的な3例をご紹介します。
折り方によって中面に記載できる情報量が左右されるため、選択する際のご参考にしてください。
V折り型
その名のとおりV型、2つ折りにしたタイプです。
ハガキを2枚連ねたような判型の用紙を折って圧着しています。片側の面は横幅が通常ハガキよりもやや短くなるのが一般的です。
折り畳むと通常ハガキのサイズですが、圧着した面も含めて合計4面に情報の記載が可能となります。
もっとも標準的な圧着DMのタイプともいわれ、展開前では通常ハガキと同サイズのため定形郵便物のハガキと同じ料金で送ることが可能です。
Z折り型
Z折り型はハガキを3枚連ねたような判型の用紙を、蛇腹状に3つ折りして通常ハガキサイズに圧着したタイプを指します。
従って中心となる面は両面に糊やニスなどを塗布することとなり、ハガキの表裏からめくって展開する形となります。
V折り型と同様に両端2面の短辺は通常ハガキより短くなることが多いですが、合計6面分という大容量の情報掲載にメリットがあります。
これも圧着時には通常ハガキサイズであるため、定形郵便物のハガキと同じ料金で送ることが可能です。
往復L折り型
往復L折り型とは、往復ハガキの片面のみがV折り圧着されたタイプのものです。
通常の往復ハガキは2枚を横並びにした判型で、返信用の面を切り離して投函するようにできています。
往復L折り型も往信用と返信用に分かれていますが、往信面が圧着されて展開すると4面(返信面を入れると6面)になるため、ここに広告や通知などの情報を掲載することも可能です。
展開前の圧着状態では、第二種郵便物の往復ハガキと同じ料金で送ることができます。
圧着ハガキ・圧着DMの圧着方法
シールのようにめくって剥がせる圧着ハガキ・圧着DMですが、そもそも「圧着」とはどういう意味なのでしょうか。
代表的な4例を挙げ、圧着の仕組みと方法について見ていきましょう。
先糊方式
先糊方式とは、あらかじめ糊を塗布した専用紙である圧着紙に文字や画像・イラストを印刷するものです。
この糊は「感圧糊」といって圧をかけることにより接着するため、高圧プレスをかけることから「圧着」といいます。
後糊方式
後糊方式は通常の用紙に文字や画像・イラストなどを印刷した後で感圧糊を塗布するものです。
圧着の仕組みは先糊方式と変わりませんが、専用紙でなくても対応できる点にメリットがあります。
PP熱圧着方式
PP熱圧着方式はDMなどの面にPP(ポリプロピレン)フィルムを挟み、熱と圧力をかけて接着する方法です。
溶けたフィルムが糊の代わりとなるイメージです。
UVニス圧着方式
UVニス圧着方式は印刷した面にUV(紫外線)で固まるタイプのニスを塗布し、ニスが硬化した状態で熱と圧力で接着するものです。
圧着ハガキ・圧着DMのメリット
圧着タイプのハガキ・DMの種類や仕組みを見てきましたが、通常のハガキDMと比べてどのようなメリットがあるのでしょうか。
以下に4つのポイントを見ていきましょう。
通常のハガキサイズなのに情報量が多い
通常のハガキであれば表面と裏面で2面のみですが、めくって展開できる圧着はがきはV折り型ならば4面、Z折り型は6面にもおよびます。
往復ハガキについても通常は計4面ですが、往復L折り型なら計6面となります。
圧着状態ですと通常ハガキサイズのためそれと同じ料金で送ることができるものの、情報掲載量が格段に多くなるのが圧着ハガキDMのメリットです。
また版面が広くなるため、印象的なデザインで視覚に訴える効果も期待できます。
プライバシーを守れる
圧着ハガキ・圧着DMでは中面が閉じた状態で接着されているため、内容に関するプライバシーを守れる点にもメリットがあります。
ねんきん定期便や保険の控除額証明等、個人情報に関わる通知書で多用されているのもこのためです。
また圧着タイプのハガキやDMは一度剥がすとそのまま再接着することは不可能であるため、開封は一度きりという点もプライバシー保護に適しています。
高い開封率を見込める
圧着ハガキ・圧着DMは高い開封率を見込めることも大きなメリットです。
圧着面がかくれているのでめくって中身を見てみたいという心理に働きかけることができる上、そのまま指で剥がせるため、封筒よりも開封するハードルが低くなります。
なお参考までに、一般社団法人日本ダイレクトメール協会の「DMメディア実態調査2021」によると、本人宛てDMの開封・閲読率は79.5%となっています。
※出典:一般社団法人日本ダイレクトメール協会 研究開発委員会編.「DMメディア実態調査2021 調査報告書要約版」(2023-4-21).
パーソナライズした内容を送れる
パーソナライズした内容、つまり送り先の個人ごとに専用の通知ができるのも重要なポイントです。
PDM(パーソナライズダイレクトメール)とも呼ばれるツールで、一通ごとに印刷内容を変えたバリアブル印刷(可変印刷)の技術を用いています。
これにより顧客一人一人に対して最適な通知やアプローチが可能となり、ダイレクトマーケティングにおけるOne to Oneコミュニケーションができます。
圧着ハガキ・圧着DMのデメリット
一方、圧着ハガキ・圧着DMにももちろんデメリットが存在します。
構造上の問題や法的な側面など、短所というよりは弱点や取り扱いに注意すべき点である部分が大きいため、合わせて確認しておきましょう。
水気に弱い
圧着ハガキ・圧着DMは水気への耐性が低いというデメリットがあります。
水濡れや湿気によって圧着面の糊やニスが剥がれたり、あるいは固まってしまい適切に開封できなくなったりといったケースもあります。
また水で濡れた状態のまま無理にめくると印字面ごと剥がれたり破れたりするなどのダメージを負うことがあるため、万が一湿気を含んだ場合は完全に乾燥させてから剥がすことがポイントです。
長期保管には不向き
圧着ハガキ・圧着DMの接着面には専用の糊やニス、PPフィルムなどを利用しており、非常にデリケートな素材となっています。
これらは環境要因を除いたとしても時間と共に劣化していくため、長期保管には不向きです。
従って大量にまとめ刷りして一通当たり単価を下げ、保管しておいて随時使用するといった運用には適していません。
注文があったその都度、必要に応じた部数を生産していくことが望ましいとされる点に注意が必要です。
郵便法に注意が必要
圧着ハガキ・圧着DMの運用では、郵便法の規定を守ることにも十分な注意が必要となります。
圧着状態がハガキサイズであり、通常ハガキと同じ第二種郵便物として郵送する場合にはサイズや重量の規定を守らなくてはなりません。
またハガキ本体(もっとも面積の大きい面)に「郵便はがき」あるいは「POST CARD」の表記が必要である点にも要注意です。
これらの表記がない場合には第二種郵便物としてではなく、封書などと同じ第一種郵便物の扱いとなります。
その結果として郵送料が不足した場合「配達前に差出人へ返送」「受取人においての不足額支払い」「受取人不在または不足額支払い拒否による差出人への返送」のいずれかの措置が取られます。
こうした事態とならないよう十分な注意を払いましょう。
圧着ハガキ・圧着DMの活用事例
次に圧着ハガキ・圧着DMの活用事例を見てみましょう。
第37回全日本DM大賞における入賞作品について、以下に2例を挙げました。
売上や行動喚起率アップはもちろん、社会貢献の側面も強いためDM施策のご参考にしてください。
沖縄県物産公社(わしたショップ)
沖縄物産の専門店である「わしたショップ」が広告主のDMが、第37回全日本DM大賞で日本郵便特別賞を受賞しました。
2022年に放送された連続ドラマ『ちむどんどん』に登場した沖縄料理食材を夏のキャンペーンでアピール。
これにより前年比来客数164%、売上117%といった効果を上げています。
Z折り型DMのうち見開き2面を使い、青い海をバックに沖縄料理とその食材に関する商品情報が豊富なビジュアルと共に訴求されています。
なお、食材の通販事業はコロナ禍の巣ごもり需要にも後押しされ、機を捉えたDM活用好例の一つです。
※出典:日本郵政グループWebサイト.「第37回全日本DM大賞 はがき部門」
. https://www.dm-award.jp/winner/37th/special/special-02.html
(2023-4-21).
トヨタファイナンス
トヨタファイナンスが広告主の「請求額通知 登録DM」は、第37回全日本DM大賞で入選の一作に選ばれました。
これはクレジットカード請求書のペーパーレス化に伴い、メールアドレスを登録していない人向けに注意喚起を行う目的で作成されたものです。
いわゆるフィッシング詐欺を防止する意図があり、応答率20%という数値を示しました。
版面にはメールアドレスの登録を促す大きな文字、そして同じく大型のQRコードを設置して目的の行動を喚起する構成が工夫されています。
この種の詐欺が増加している昨今、時代のニーズを的確にとらえた活用事例の一つといえます。
※出典:日本郵政グループWebサイト.「第37回全日本DM大賞 入選一覧」
. https://www.dm-award.jp/winner/37th/special/special-02.html
(2023-4-21).
まとめ
ダイレクトメールでよく見られる、展開できるタイプのハガキに用いられている「圧着」の種類や仕組み、メリット・デメリットや活用事例をご紹介しました。
通常ハガキと同じ郵送料ながら、より多くの情報を掲載できることが魅力です。
「DM+」では顧客ごとのDMに固有のQRコードを添付し、送付後のトラッキングができるサービスを展開しています。
これによりDMを受け取った後にどういった行動をとったか、あるいはそれをきっかけとして商品の購入やサービスの利用に至ったかをモニターすることも可能です。
紙DMを利用した販促・マーケティング施策に、ぜひご活用ください。