ビジネスにおいて何かを売るためには、それが形のあるものであれサービスであれ、何らかのマーケティングが必要となります。
中でも販売促進は重要で、商品やサービスを顧客に知ってもらい、そして購入にまで至る導線の設置は必須の施策といえるでしょう。
インターネットの普及によりテレビ・ラジオ・新聞・雑誌などのマスメディア以外でも、動画や音声を含むさまざまな広告コンテンツをweb上で発信できるようになりました。
しかし依然として、その根幹を成すものは文章であるともいえます。
本記事ではセールスコピーに焦点を当て、押さえるべきポイントや売上アップに貢献する書き方のコツを解説します。
セールスコピーとは?
セールスコピーとはそれを読んだ人に、商品やサービスについて購入・利用・問い合わせといった行動を喚起するための文章のことです。
その名のとおりセールス、つまり売り込むことが目的の文章であるため、ユーザーの「買ってみよう」「問い合わせてみよう」という興味関心を引き起こすことがポイントとなります。
そのためにはニーズをよく捉えることと、読んだ人にとってどのような便益がもたらされるのかを明記するのが重要です。
別名を「セールスライティング」ともいい、紙のダイレクトメールやwebサイトのランディングページなどによく用いられます。
セールスコピーとイメージコピーの違い
セールスコピーとよく似た印象のものに「イメージコピー」という文章があります。
どちらもコピーと名が付きますが、両者には明確な区分があります。
セールスコピーが購入や利用を促すための具体的な情報を含む宣伝文とすると、イメージコピーは商品やサービスの認知拡大を目的とした文章です。
そのため必ずしも売物の全容を知らせる必要はなく、散文的あるいはエモーショナルなコピーの例も数多く見られます。
イメージコピーで企業や店舗あるいは売物の存在を認知してもらい、セールスコピーで商品やサービスのベネフィットを宣伝するといった役割分担がなされています。
セールスコピーを作成する際に押さえるべき13のポイント
ではセールスコピーを作成する際には、具体的にどのような点に注意すればよいのでしょうか。
以下に押さえるべき13のポイントを挙げて順番に説明します。主にコスメ・スキンケア関連の商材の具体例もご紹介します。
1.顧客の悩みや課題
顧客の悩みや課題に関することを織り込むのは、セールスコピーのセオリーの一つです。
個人であれ企業・団体であれ、商品やサービスに対する期待には課題解決の方法となるものを少なからず含んでいると考えられるためです。
そのためには普遍的で漠然とした悩み・課題ではなく、発信しようとしている商品・サービスが応えることのできるものを具体的に書くとよいでしょう。
例えば「お肌の悩み」とするよりも「目の下のたるみ」などとすることで、一気に解像度が上がります。
2.悩みや課題の原因
顧客にとっての悩みや課題を明確にした後は、その原因について言及しましょう。
課題解決のためにはそもそもそれが何に起因するものか、源流に遡って考えるのはセールスコピーに限ったことではありません。
先述したお肌の悩みに関することを例にとるならば、加齢や睡眠不足、栄養不足やアレルギー症状等々、多種多様な原因が挙げられます。
実際に商品やサービスを宣伝する段階では、そうした原因特定によって課題解決への導線を設けましょう。
3.解決策は何か
セールスライティングでは読む人にとっての具体的な情報が重要となるため、悩みや課題に対する解決策を示すのがポイントです。
核心に関する部分であるため少し焦らすようにして詳細解説の文章や特設ページに誘導するという方法もありますが、ここで課題解決が可能であると印象付けるようにしましょう。
スキンケア関連であれば保湿などによるお肌のコンディショニングであったり、サプリを用いた栄養補給や体質改善であったりなどの具体策が挙げられます。
4.解決策の根拠
解決策を記した流れで、必ずその根拠を示すことも大切です。
セールスコピーでいくら効果を謳ったとしても、その客観的な理由を理解して納得できない限りは購買行動に至らないと考えられるためです。
そのためには、化粧品やサプリであれば使用されている成分やその効能などを記載し、医学的見地など専門分野からの情報で補強するといった方法が挙げられます。
他の商材でも同様で、数値や実績など公正な立場で目に見える形のデータを提示することが望ましいといえるでしょう。
5.解決後の未来
顧客にとっての課題解決をセールスコピーで提案しても、それで終わりではありません。
一度解決すれば以降の対策が必要ないという事柄は多くないことが想定され、継続的な対応が必要となるケースもあるためです。
またさらに別の課題が発生する場合もあり、こうした課題解決後の未来に言及してアフターフォローの道筋まで記すことが重要といえます。
コスメやスキンケアに関わる商材は継続利用が望まれるものの好例で、課題解決後の未来についても知らせることが肝要です。
6.差別化
セールスライティングでは、他の商品やサービスとの差別化について述べる必要もあります。
これは一般的な販促施策でも同様ですが、競合する他の企業や商材と比較した際にその優位性を顧客にアピールすることが求められるためです。
やはり可能な限り客観的なデータで差別化の根拠を示すことが重要で、数値や効果などを目に見える形で知らせるとより効果的です。
7.成功事例
セールスコピーへの効果的な記載事項の一つに、成功事例が挙げられます。
これは商品やサービスの愛用者の声でもあり、いわゆる口コミによる高評価でもあります。
実際に利用した人の体験談でもあるため、これから試してみようと考えている顧客にとっては有益な情報です。
ただし賛美的な要素が強すぎると逆に不安感を抱かせる場合も考えられ、あくまで個人の感覚や体験によるものであることの注記などに配慮しましょう。
8.顧客に提供される物
顧客に提供される物が一体何であるのか、セールスコピーにおいて明確に記しておくこともポイントです。
これは商品やサービスそのものは当然として、手にしたり利用したりすることで顧客にどのような便益がもたらされるのかを明らかにするという意味でもあります。
一般に「ベネフィット」とも呼ばれる顧客にとってのメリットになる部分であり、課題解決を通じて獲得できる目標の効果や姿をイメージできるようにすることが重要です。
9.価格の妥当性
商品やサービスの優れた点や顧客の便益になる事柄、利用した人の成功事例などは重要な項目ですが、価格面での妥当性も不可欠な要素です。
どれほどよい商材であったとしても、顧客にとって納得のいく価格でなければ購入へのハードルは下がりにくくなります。
実際の価格は企業にとって順当な値付けであっても、顧客へと適切に伝えることがポイントとなります。
セールスコピーではこうした具体的な事柄を記載するのに適しているため、価格の妥当性についても分かりやすく述べましょう。
10.顧客にとってのリスク
意外なようですがセールスコピーでは商材のメリットだけではなく、デメリットや顧客にとってのリスクも書くことはセオリーの一つです。
一見売り手にとって不利益となる事柄のようですが、リスクを適切に通知することは誠実な姿勢であると同時に、免責事項の記述としても機能します。
よいことばかりを列挙するのではなく、顧客にとってのリスクをあらかじめ知らせることで売り手への信頼感が増すという効果もあります。
11.今買うべき理由
商材を売るためにはタイミングも大切な要素となります。
売り手側の顧客に買ってほしい機を捉え、セールスコピーで購買行動を後押しするといった運用が重要です。
そのためには後日に改めてではなく「今」買うべき理由を述べることがポイントとなります。
例えば期間限定の特典など顧客へのベネフィットをもって訴求したり、商品の数に限りがあることを知らせたりとタイムリミットをアピールする方法も効果的です。
12.行動喚起
行動喚起とは、セールスコピーを読んだ顧客に具体的なその後の行動を促すことを意味しています。
読んで終わりではなく、そのことをきっかけとして購買や利用に結び付けることが目的の文章であるため、セールスコピーが担うもっとも重要なタスクといっても過言ではありません。
そのためには実際に顧客が購買行動を起こすための導線として情報を提供する必要があり、例えばそのコピーを読んで添付のQRコードからアクセスすると何らかの特典を付与するといった方法などがあります。
13.追伸
追伸とは手紙などの末尾に追加する形で別件や補足的な事柄を記すことを指し、これはセールスコピーにおいても効果的な手法です。
セールスコピーはその性質上内容が実務的な要素に傾きやすくなり、ともすればビジネスライクな印象が強くなりかねません。
そのため追伸という形で顧客宛てのメッセージや、商品・サービスに込めた思いなどを記すという方法もあります。
文章の最後に読むことになるため印象に残りやすく、イメージコピーの分野に近い散文的な雰囲気を自然に出すことも可能です。
セールスコピーでよく使われる書き方の法則4つ
次にセールスコピーでよく使われる、書き方の法則について見てみましょう。
これらはマーケティングの基礎となるものであり、その理論をうまく取り入れて文章を作成することが肝要となります。
1.AIDMAの法則
AIDMAとは1920年代にアメリカの著述家サミュエル・ローランド・ホールによって提唱された、消費者の心理を含む購買行動プロセスを表す法則です。
Attention(認知)・Interest(興味・関心)・Desire(欲求)・Motive(動機)・Action(行動)、それぞれの頭文字をとったもので消費者が商品やサービスの購入に至る順序と段階を示しています。
Attentionでまずは商品などの存在を知り、次にそれに対する興味や関心を抱くInterestの段階に移行。
Desireとはその商品を欲しいと感じることで、Motiveとは本当にそれが必要なのか、あるいは手に入れることでどういったメリットが生じるかなど購入への動機付けを検討することを意味します。
最後のActionは購買することそのものを指し、最終段階の行動となります。
このうちAttentionを「認知段階」、Interest・Desire・Motiveを「感情段階」、Actionを「行動段階」と呼んでおり、セールスコピー作成にはこのプロセスを意識することがポイントです。
20世紀初めという100年以上前の時代に構築された理論ではありますが、購買に関する人間の基本的な行動原理はほとんど変化していないといえるでしょう。
現在ではインターネットを媒介とした要素を加味した「AISAS」という法則も知られていますが、AIDMAが示す購買プロセスは現代社会でもマーケティングの基礎の一つと考えられています。
2.QUESTの法則
QUESTの法則とは2005年にアメリカのコピーライターであるマイケル・フォーティンによって提唱された、コピーライティングの基礎理論の一つです。
別名をQUEST Formulaともいい、Qualify(絞り込む)・Understand(共感する)・Educate(啓発する)・Stimulate(興奮させる)・Transition(変化させる)の頭文字をそれぞれ取って名付けられました。
セールスコピーに求められる要素を5つに分けたものであり、課題解決を望む層をターゲットとすることに適しています。
特に検索によってさまざまな情報を収集していくインターネットとの親和性が高く、eコマースやwebサイトのランディングページに用いることが効果的です。
Qualifyによって読み手の特定と課題の明確化を促し、Understandで問題意識を共有して解決への意識を高めます。
Educateでは課題解決に至る方法を示してこれを強調し、Stimulateの段階で読み手のモチベーションをさらにアップさせる情報を展開。
最後のTransitionは変化させるという意味のとおり、読み手を見込み顧客から購買者にすることを指しています。
このように、感情と論理を巧みに組み合わせつつロジカルに利点を強調して印象付けていくことがセールスコピーの戦略であり、読み手を段階的に引き込んでいく文章構成技術がQUESTの法則のポイントです。
3.PASONAの法則
PASONAの法則とは1999年に経営コンサルタントの神田昌典が提唱した、顧客の購買行動を喚起しやすいメッセージの伝達順序を表すものです。
PASONA とは、Problem(問題)・Affinity(親近感)・Solution(解決策)・Offer(提案)・Narrowing Down(絞り込み)・Action(行動)の頭文字を示しています。
本来はProblem(問題)・Agitation(煽り)・Solution(解決策)・Narrowing Down(絞り込み)・Action(行動)でしたがこれを旧PASONAの法則と呼び、本記事では前者である新PASONAの法則を取り上げましょう。
Problemでの問題提起に始まり、Affinityではそれを掘り下げることでユーザーの共感を得て本題への導線を設けます。
Solutionの段階では解決策の説明、次のOfferでは具体策の提案、Narrowing Downで施策としての詳細を絞り込みます。
そして最後のActionで商品・サービスの購入や利用といった行動に導く、というのがPASONAの法則の考え方です。
課題意識を持っているユーザーへのアプローチとしてたいへん論理的かつ、すっきりとした流れのためセールスコピーにおいても文章構成の起承転結に応用できる法則といえるでしょう。
なお、旧PASONAの法則でのAgitationは「煽り」と訳されますが、これはユーザーの不安感や焦燥感を焚きつけるという意味ではなく、問題意識を掘り下げてモチベーションを上げるという文脈で使われています。
4.CREMAの法則
CREMAの法則とはライティングにおける文章の構成順序の一例を示したものです。
Conclusion(結論)・Reason(理由)・Evidence(証拠)・Method(手段)・Action(行動)の頭文字を取って名付けられました。
文章のパターンとしては最初にConclusion、つまり結論があることが特徴で特定のターゲットを意識したコピーやページに適しています。
Reason、Evidenceと続くのはその結論に至る根拠を逆算的に記述するものですが、次にMethodで具体的な手段・方法を示すこともCREMAの法則ならではです。
ユーザーはこれを参考に自身の事例に当てはめることで、最終段階のActionへと自然に導かれます。
このことからCREMAの法則で書かれた記事や文章は、ある意味でマニュアルとして機能するともいえます。
特に問題意識や課題感を持っているユーザーの中でも、ある程度目標やゴールが明確な層に有効な論法でもあります。
「こうするとよい」という概論については多くの情報が手に入りますが、具体的な手段の例は必ずしも見つかるとは限りません。
こうしたユーザーにとってのニーズを的確に汲み取り、いわばお役立ち情報として記述するのがCREMAの法則の強みといえるでしょう。
この場合は最初に結論を持ってきたとしてもそれが「方法の答え」ではないため、その先の文章を読んでもらうという目的を果たすためにもMethodの配置は重要です。
セールスコピーを書く際に意識すること2つ
締め括りとして、セールスコピーを書く際に意識すべきことは何かについて見ておきましょう。
このジャンルに限らずあらゆる文章に当てはまる基本的な事柄ではありますが、こうした原点に立ち返ってユーザーファーストを心掛けることが重要です。
以下、2つのポイントを挙げました。
1.簡単で分かりやすい文章を書く
まずは簡単で分かりやすい文章を書くよう配慮することがポイントです。
そのためにはできるだけ簡潔な記述を心掛け、一文一意と例えられるように一文節を冗長にしないことに注意しましょう。
専門用語は仕方がないとしても、むやみに難しい漢字を用いたりなじみの薄いカタカナ用語を使ったりすることも避けるのが無難です。
セールスコピーはその性質上、すべて読んでもらってこそ本来の効果を発揮します。
したがって読みにくい文章にストレスを感じた場合、ユーザーが途中で離脱する可能性が高くなります。
そうした事態を防ぐためにも、簡単で分かりやすい文章を書くようにしましょう。
2.具体性を入れて説明する
セールスコピーでは特に具体性を入れて説明することが重要となります。
具体性とは明確な数値や効果測定の結果など、客観的なデータを含む情報のことです。
また漠然とした概論ではなく、方法論の詳細を説明することもポイントです。
読み手は目的のために何をどうすればよいのかという、課題解決を期待してセールスコピーに目を通すと考えられます。
そうした情報を提示することで商品やサービスの購入・利用へと導くことがセールスコピーの役割でもあるため、これらの情報に具体性を持たせることは必須といっても過言ではありません。
まとめ
今回はセールスコピーについての概要と書き方のポイントについて解説しました。
こうしたセールスコピーは販売促進に有効な施策であり、重要なマーケティング技法の一つです。
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これによりDMを受け取った後にどういった行動をとったか、あるいはそれをきっかけとして商品の購入やサービスの利用に至ったかをモニターすることも可能です。
紙DMを利用した販促・マーケティング施策に、ぜひご活用ください。