[導入]
どのようなビジネスでも顧客の獲得は重要な課題の一つであり、自社の商品やサービスを多くの人に購入・利用してもらうことが成否の要です。
そのためには顧客になってくれる可能性のある層に向けてコマーシャルや訴求を行う必要がありますが、マーケティングではこれらをいくつかのステージに分類し、それぞれの特性に適した働きかけをします。
そのうちの一つに「潜在顧客」という区分があり、適切な取り組み次第で自社の顧客となる可能性を秘めた層とされています。
本記事ではそんな潜在顧客の掘り起しについて、効果的なアプローチ方法を交えて解説します。
潜在顧客とは?
最初に、潜在顧客とはどのような顧客なのか、定義を確認しておきましょう。
文字どおり顧客としての潜在性を秘めた層のことであり、当然この段階ではまだ顧客ではありません。
商品・サービスに関して何らかのニーズを持っているものの明確に自覚しておらず、さらに具体的な購買行動も起こしていない人のことと定義できます。
さらに潜在顧客の中でも自身でも正確なニーズに気付いていない層と、ニーズの自覚はあるもののそれを満たす商品やサービスの存在を把握していない層とにわかれます。
表面化しづらいこのような部分が、企業にとって潜在顧客の具体的な動向をつかみにくくしている原因の一つです。
しかし膨大な裾野を持つ潜在顧客は可能性の宝庫といえ、適切なアプローチによってニーズを自覚して顧客になってもらうことを期待できる層でもあります。
見込み顧客との違い
潜在顧客とよく似た言葉に「見込み顧客」があります。
両者は同じニュアンスで使われる場合もありますが、正確には異なる範囲の顧客層を表す用語のため違いを確認しておきましょう。
顧客が購買やサービス利用に至る過程には、認知、興味・関心、比較検討、購入・利用というフェーズがあります。潜在顧客とは認知または認知に至る以前の層を指します。一方で見込み顧客は、認知、興味・関心、比較検討の全ての層を指し、将来購入・利用に至る可能性がある顧客を意味します。
潜在顧客の中には自身のニーズにすら気付いておらず、認知までたどり着かない層が多くいます。このような潜在顧客を探し出しマーケティングすることで、見込み顧客へ引き上げるというイメージです。
顕在顧客との違い
顕在顧客とは自身のニーズに対する認識があり、それを満たす可能性のある商品がいくつかあることを知っている層のことです。認知、興味・関心、比較検討、購入・利用というフェーズの中では、興味・関心、比較検討段階の顧客です。そのため顕在顧客はみずから商品を探す、Webサイトで情報を検索するなどの能動的なアクションを起こします。
顕在顧客は潜在顧客と密接な関係にあり、潜在顧客が自社の存在を認識することで顕在へと変化していきます。潜在顧客の延長線上に位置するのが顕在顧客といえます。潜在顧客の上位層と顕在顧客とを合わせて見込み顧客と捉える考え方もあります。
潜在顧客の掘り起こしをするメリット
潜在顧客についての概要と見込み顧客・顕在顧客との違いを概観しましたが、ではまだ認知すらしていない潜在顧客へアプローチするメリットがあるのでしょうか。
自身のニーズが曖昧であったり、そもそも自覚していなかったりするのであれば、一見訴求が難しそうな層に感じますがそうではありません。
状況によっては見込み顧客や顕在顧客よりも有効なターゲットになる場合があり、潜在顧客の持つ性質を把握して上手にアプローチすることが肝要です。
以下、潜在顧客の掘り起こしを行うことのメリットを3つ挙げて説明します。
顕在顧客よりもアプローチがしやすい
潜在顧客を掘り起こすことのメリットとして、顕在顧客に比べてアプローチしやすい点が挙げられます。
既にニーズが明確な顕在顧客と比較すると競合が少ないため、売り手側からの情報発信により需要を喚起し、自社の顧客になってもらう導線を設置しやすいためです。
また潜在顧客の母数は顕在顧客よりも圧倒的に多いため、競合他社との競争率も低くなります。
ただし潜在顧客はそもそも自身がどのようなニーズを持っているのかが明確ではないケースが多いため、この層にアプローチするためには売り手側が的確な回答を示す必要があるでしょう。
潜在顧客層のニーズを先読みして明示し、上手に購買行動を喚起する工夫が必要です。
新規市場の創出ができる
これまで見てきたとおり、潜在顧客はまだ顧客ではなく「顧客候補になる可能性」がある状態に過ぎません。
しかしそれだけに一定数を顧客候補、そして実顧客とすることに成功した場合、新規市場を創出できる可能性があります。
先述のように、新たにアプローチする潜在顧客は他社とパイの奪い合いになることが少なく、一から自社の顧客として育てられる可能性があります。自社の独自市場ともいえる顧客層の形成も不可能ではありません。
そのため新規市場というブルーオーシャンを創出することもできるでしょう。
例えば、従来はインバウンドマーケティングで地域密着型のサービスを提供してきた企業が他地域で新規市場を発見したり、自社のサービスを海外で展開するためのニーズを見出したりといったことが考えられます。
当然ながら商品・サービスの持つ性質にも左右されますが、潜在顧客の掘り起しにはこのように新しいフィールドを自ら開拓できる可能性が秘められています。
信頼関係を築ければ競合を圧倒することができる
顧客が購買・利用に至るフェーズの中では初期段階である潜在顧客のうちにアプローチを進めておくことで、親しみや信頼性が生まれ顕在顧客や実顧客となった際に競合よりも有利になり得ます。
また、潜在顧客時代から信頼関係を築くことによって成約まで至った顧客は、長期的にサービスを利用する傾向があります。人間関係の基本と同様に顧客との関係作りもコミュニケーションの積み重ねが重要なのです。
このように、信頼関係をしっかりと構築しておけるという点でも、潜在顧客の掘り起こしには大きなメリットがあるといえます。
潜在顧客へアプローチする手法
では潜在顧客にアプローチするためには、具体的にどのような方法があるのでしょうか。
主に4つの方法があり、いずれも潜在層に限らずさまざまなステージの顧客に対しても活用できる方法ですが、、特に潜在顧客への効果に着目して紹介します。
Web広告
Web広告はインターネット上に掲載される広告の総称で、現代では日常的に目にする機会が多くなりました。
Webサイトなどを閲覧していると表示されるディスプレイ広告や、動画で訴求する動画広告などが一般的です。
また各種SNSに表示されるSNS広告や、記事コンテンツに挿入される記事広告など、適材適所に配置されています。
これらには直接的にブランドや商品をPRするものもありますが、視聴者のニーズを知覚させて興味関心を引き出す導線として設計されているものが多く見られます。
ニーズが曖昧な潜在顧客を取り込んで自社の商品・サービスに興味を持ってもらうのに有効なアプローチとして定着している手法です。
オウンドメディア
オウンドメディアとは企業などが運営している、自社サービスに関連する情報を発信するためのWebサイトです。
オウンドメディアは単に商品やサービスを訴求するためだけのプラットフォームではありません。直接的に売るための施策というよりむしろ、製造の舞台裏や商品・サービスを取り巻くエピソードなどを紹介するような情報もよく扱われています。
いわば自社のファンを獲得してもらうための足掛かりとして機能する面が大きく、この点で通常のECサイトや企業サイトと異なります。
もちろん最終的には実顧客となってもらうことが目的ではありますが、潜在顧客の興味関心を引いてファンを増やし、その後の行動を喚起するのに適した手法でしょう。
セミナーやウェビナー
講師やインストラクターが壇上に立って行うセミナーや、オンラインで行うウェビナーも潜在顧客へのアプローチに有効な方法です。
ある程度ターゲットの興味・関心が絞られていてテーマが明確である必要がありますが、講師の顔が見える状態で「話を聞く」という体験は非常にインパクトのあるものです。
受講者は何らかの目的意識を持って参加することが前提であるため、充実したセミナー内容で有益性を感じてもらえた場合には、自社の商品・サービスへの強力な導線となるでしょう。
またこうした講義形式の集客施策では、受講者にとっての課題解決など役に立つ情報を示すことがポイントとなり、成功すると潜在顧客が上位のステージに成長して実顧客となってもらえる可能性が高まります。
DM
この場合のDMとはSNSなどで用いるダイレクトメッセージではなく、紙媒体としてのダイレクトメールのことを指します。
ターゲットに直接届く現物としての手紙であり、高い開封・閲読率を誇るツールです。
『DMメディア実態調査 2022 調査報告書要約版』によると本人宛てDMの開封・閲読率は75.4%にものぼり、宛名なしでも58.0%という高い数値を示しています。
このことから紙DMはWeb全盛の現代でも強力な訴求効果を持つツールであるといえ、潜在顧客の掘り起こしにも有効性が期待できます。
またDM本体にクーポン機能を付けたり、QRコードやURLを添付してそこからのアクセスを解析することで顧客の行動をある程度モニターしたり、集客や効果測定を行えることも大きな強みです。
※出典:一般社団法人日本ダイレクトメール協会 研究開発委員会 編.「DMメディア実態調査2022 調査報告書要約版」
. https://www.jdma.or.jp/upload/research/20-2023-000026.pdf
(2023-9-19).
潜在顧客へアプローチする際のポイント
最後に、潜在顧客に向けてアプローチする際に注意すべき3つのポイントについて見てみましょう。
繰り返し述べてきたように潜在顧客はまだ顧客としての実体がない状態の層であるため、実顧客に育ってもらうことを念頭に置いた働きかけが必要です。
ターゲットや課題を明確にする
ターゲットや課題を明確にすることはあらゆるマーケティングの原則ですが、潜在顧客へのアプローチでも特に重要な事項です。
そもそも潜在顧客は非常に広範な意味合いを持っており、そのニーズも不定形な場合が少なくありません。従って不特定多数にやみくもな訴求を行うのではなく、明確な課題感を持ってターゲットとなる層を絞る必要があります。
シンプルにターゲティングと言い換えることもできますが、潜在顧客の特質から必ずしもすぐに実顧客へと誘導できるとは限らない点に留意しましょう。
顕在顧客となってもアプローチを続ける
潜在顧客が自身のニーズを明確に認識することで顕在顧客へとステージが変わりますが、潜在層の掘り起しに成功した後も引き続きアプローチを続けることが重要です。
というのも顕在顧客の段階ではまだ自社の商品・サービスがニーズを満たすための候補として挙がっているとは限らないためで、継続した働きかけで自社に興味・関心を持ってもらうためのステップに移行する必要があるためです。
当然ながら顕在顧客化した後も同様で、最終的に自社商品やサービスの購入・利用へと導くための布石であることを理解した上でアプローチを続けましょう。
ツールを活用して効率的にアプローチする
潜在顧客へのアプローチにはターゲティングがポイントとなることを先に述べましたが、そのための分析に必要な専用ツールの使用も効果的です。
アプローチすべき潜在顧客の数が多ければ多いほど、手作業での選定や振り分けには相応の手間がかかります。
従って専用ツールを活用しての効率的なターゲティングが望ましく、例えば送付した紙DMにトラッキングコードを付与してアクセス解析を紐づけるなど、紙とデジタルを組み合わせた施策にも応用が可能です。
まとめ
潜在顧客の掘り起しについて、効果的なアプローチ方法の具体例を交えて解説しました。
自社の顧客へと成長する可能性のある層への働きかけは重要な施策であり、興味関心を引きながら段階的な働きかけを行うことが肝要です。
販売促進やマーケティング施策に有効な分析型DM(ダイレクトメール)を提供するDM+では、顧客ごとのDMに固有のQRコードを添付し、送付後のトラッキングができる「ユニークQRコード作成サービス」を展開しています。
これによりDMを受け取った後にどういった行動をとったか、あるいはそれをきっかけとして商品の購入やサービスの利用に至ったかをモニターすることも可能です。
潜在顧客へのアプローチとしても効果を発揮する、DMを利用した販促・マーケティング施策にぜひご活用ください。